引退。
ナンパ師も、いつまでも女の尻ばかり追いかけているわけではない。
ある者は、快楽を知ることを出来ず、その場を去っていく。
ある者は、快楽を知りすぎて目標を失い、その場を去っていく。
そしてある者は、自分のまわりの環境の変化によって、止むなくその場を去る。
今日はそんな、環境の変化によってナンパを引退(仮)した人と合流したときのお話。
(仮の意味は、あえて追求しない)
週末の夜10時、オーウェンは栄の街に居た。
彼女の電話による監視の目をくぐり抜け、やってきた。
今日は引退(仮)をしたエスさんと久々の合流である。
エスさんは引退(仮)者であるため、今日はあくまでもクラブに踊りにいくのである。
もう一度言う。今日はクラブに踊りに行くのだ。
最近はiD(通称・赤箱)に入り浸っていたが、久しぶりにW(通称・白箱)にINすることにした。
週末ということもあり、かなりの賑わいを見せている。
エスさんと乾杯を交わし、テーブルの上にお酒を置いて音楽に合わせてリズムを取る。
曲はクラブのベタな選曲メドレーといったところだろうか。。。
ほんとにベタだ。
クラブ初心者のオーウェンですら、吐き気を覚えてしまうほどの有名曲ラッシュ。
エスさんが選曲のセンスの無さに萎える。
せっかく、引退(仮)した身であるにも関わらずこうしてクラブに踊りにきたのだ。
そりゃがっかりだ。
そして、苦痛に顔を曇らせながら、エスさんはこう声を絞り出した。
「ナンパしてぇ・・・」しかし、何度も言っているように、彼は引退(仮)した身である。
引退したのにナンパするなんて、卒業して一週間後くらいにチームサプライズとしてA●Bのステージに上がった大●優子くらい納得出来ない。
ちなみに、オーウェンはA●Bには興味が無い。
どちらかと言うと、BKBの方が興味がある。
失礼、話が逸れてしまった。ヒィーーーーヤッ。
あくまで、エスさんは引退(仮)する前までのように活動したいという想いを言葉にしただけだった。
引退(仮)の決意は固い。絶対にナンパはしない。しばらくすると、選曲が更に鬼のようになってきた。
洋楽の合間に流れる、安室奈美恵の「SWEET 19 BLUES」。
洋楽の合間に流れる、H Jungle with Tの「WOW WAR TONIGHT」。
浜田雅功を流すクラブを、クラブと呼んでいいのだろうか?しかし、家庭的な事情により湯水のようにお金を使うわけにはいかない。
クラブのハシゴは許されないエスさん。
時折流れるEDMを生きる材料にしながら、二つあるフロアを行ったり来たりしながら求める音楽を探す。
そんなフロア移動中、
階段を下りた先に一人で佇んでいた女の子に、一直線に声を掛けにいくエスさん。おかしい。
彼は引退(仮)したはずじゃないか?
どうして女の子に声を掛けるんだ?
一通り女の子と会話をした後、エスさんはオーウェンにこう言った。
「困ってる女の子がいたから人助けしてたんだよ」!!!私は、自分自身を殴ってやりたくなった。
引退(仮)したエスさんを、ナンパしたなんて疑うなんて・・・。
もちろんそんなことは無く、むしろ困っている女性を助けるという、人間として尊敬に値する行動を取っていたのだ。
そこから、ボランティア精神が爆発したエスさんは、あちこちの困っている女性に声を掛けて人助けをした。
基本的に一人ぼっちの女の子ばっか助けるので、オーウェンは暇だった。そんな気持ちが通じたのか、二人組の片割れを助けるエスさん。
もう一方の女の子を助けるオーウェン。
私も踊りにきたが、人助けをするエスさんを、ちょっとだけ手伝うことが出来た。
選曲はさておき、人助けを少々と、投げやりにハイテンションになったことで、何とか楽しむことが出来た。
エスさんは楽しく踊りきれずに悔いが残ったようだ。
また別の箱でリベンジしたい。
オーウェンがエスさんと知り合った頃は、エスさんは1秒あれば女の子をナンパしているような人だった。
しかし、今では引退(仮)したことによって、ナンパをすることが無くなった。
人間は決意をすることによって、ここまで変われるんだ。
そう強く感じた。
クラブ終了後、エスさんにぜひお会いしたいというあるお方とエスさんを引き合わせることになった。
その方は、最近名古屋のナンパブログで旋風を巻き起こしている方。
エスさんも、その方に会ってみたかったようだ。
その方はiD前にいるとのことで、Wからのおよそ100mほどをエスさんを引き連れて移動した。
エスさんは、クラブから出て外を歩いている中でも、引き続き人助けを行なっていた。人助けするのはいいことだが、たった100mほどの距離がなかなか進まない。
こちらからお願いしてiD前である方に待って頂いていることもあり、
なかなかiDに歩を進めず人助けばかりしているエスさんに、オーウェンはしびれを切らしてこう言った。
「とりあえずナンパせず合流しましょう。」オーウェンの一言で、エスさんはちゃんと言うことを守って歩き出した。
つづく。
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